Moon RiverはHenry Manciniが作曲し、映画「ティファニーで朝食を」の主題歌で劇中でオードリー・ヘプバーンが歌った名曲です。
数多くのアーティストがカヴァーしたスタンダード曲ですがその中でも僕が一番愛しているのがToninho HortaのソロギターアレンジVer.のMoon Riverです。
僕がToninho Hortaを知ったのはPat Metheny経由でした。Methenyがブラジル3部作(FIRST CIRCLE、still life(talking)、LETTER FROM HOME)を作った時に多大な影響を及ぼしたアーティストがToninhoという噂を聞き、早速アルバムMoon Stoneを先輩に借りて聞いてみたのですが、そこでかなりの衝撃を受けました。時々Methenyが弾いてるんじゃないか、と疑いたくなるようなプレイ(実際にMethenyもアルバムMoonStoneに参加しています)、そしてメロディックマイナー群を使った美しいコードワーク。そして各楽曲の完成度の高さ。
そこから僕のToninho熱があがり、様々なアルバムを買い、情報を調べ、そしてあるときYouTubeの片隅でこのライブを幸運にも観る事ができました。
最初に観たときにまず思ったのは、こんなにも美しい音楽があり得ていいのだろうか、という事。そしてToninhoの他の曲でのリラックスした演奏とはほど遠い、ある意味異常なくらいに曲に深くのめり込んだ内省的な全編ルバートでの演奏。もともと素晴らしい名曲ですし、Toninhoの美しいコードワークでアレンジすれば素晴らしい演奏になるのは容易に想像出来ますが、この演奏にはそれ以上の何かがあるように感じられます。おそらくはToninho自身の個人的な何かを、この曲に代弁させているのではないか、そしてそれが聴衆の個人的な何かと共振してある感情を動かすのではないかと思います。
この雰囲気に既視感を覚えて、よくよく思い出してみると村上春樹の風の歌を聴けの読後感に似ているように思えました。特に小説の中でラジオDJが病室の寝たきりの女の子の手紙を読み終えた後に言う台詞を読んだときのあの感じによく似ているように思えます。上手くは言えないですが、おそらく近いのは「許し合う」という言葉だと思います。Toninhoが演奏している時、僕にはToninhoが誰かに許しを乞い、そしてその誰かを許す。そのように僕には思えました。
たった一本のギターでの演奏で、ここまでの深い演奏を生み出すToninho。音楽や何かに迷った時にこの演奏を聞くと、本当に大切なものは何か、と言う事に気が付かされる気がします。僕はおそらくこの先、何度も何度もこの演奏を聞き続けるのだと思います。
是非聞いてみてください。
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