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ボーカルデュオのレコーディングをしていて気づいた事。アレンジメントの方向性。
recording / andresavastano
ただいまボーカルデュオの作品をつくるべくレコーディングを開始しています。Acousphereの奥沢さんにディレクションして貰いながら伴奏のギターのアレンジメントを進めているのですが、その中で色々気づいた事をメモライズしていきたいと思います。
recording / andresavastano
これまでインストものやバンドのアンサンブルの中でのボーカルものは録った事があるのですが、ギターと歌のみのデュオでのレコーディングは初めての経験です。二人だけで楽曲が成り立つようなアレンジにしなければならないのですが、これまでの楽曲のアレンジの仕方ではなかなか上手くいきません。ギター1本でベースとドラムの役割も兼用しなければならないので、コードという概念から離れていく必要があるようです。
1.譜面に頼らない。
今回カバーする事になった楽曲の譜面はすでに持っていました。しかしJazzを専門にやっているピアニストの採譜した譜面で至る所にジャズ的なケーデンスでリハモニゼーションされており、演奏してみてしっくり来ませんでした。そこで実際に原曲からトランスクライブする作業から入りました。
2.ベース音とコードのオンコード(分数コード)で採譜する。
バンドサウンドのトランスクライブをする時の癖でコード毎に音をとっていたのですが、ギター1本で伴奏する場合、低音はベース、そして上のトライアドはコードとして捉えたほうがより良いようです。なぜならギター1本でバンドサウンドを表現する、Tuck Andressの提唱するワンマンリズムセクションはそういった考え方で作られており、そういうアレンジの仕方をするためコード理論から離れたより自由度のある複雑なハーモニーが作れるようです。
例えば単純なCメジャー7もEマイナー/Cと捉える。等
そういった音の取り方をする場合は先にベース音から採譜した方が良さそうです。
3.メロディトラックを作る。
トランスクライブが終わったらアレンジメントを作り込むため、プリプロ作りを始めます。まずギターをレコーディングする前にメロディをMIDIなどで打ち込んだトラックとドラムを打ち込んだリズムトラックを作ります。
メロディトラックを作る理由はメロディを聞きながらでないと伴奏の演奏の質が変わってしまう事、そしてある程度あたりがついてると演奏しやすいという事です。
またクリックだけ聞いて演奏するとどうしてもグルーヴがよれてしまうため分かりやすいリズムトラックも作ります。
4.コードでアレンジしない。
上記の2つのトラックが完成したら、早速ギターをレコーディングしながらアレンジを作っていきます。なぜ先に作ってからレコーディングをしないかというと、一つ一つ音を録りながらアレンジしていくと細部の荒さが見え、また演奏も客観的に聞く事ができより質の高いアレンジメントができるから、というのが一つと、レコーディングしてパートを決めてしまうと後で変更しないので時間が短縮できる事があります。
さてアレンジですがこれまでの基礎の音楽理論や経験などからコードを元にリハモなどをすると型にハマったものができがちです。そこで今回はトップのハーモニーの進行、そしてベースラインの進行、内声の進行、と3つに分けてアレンジしていきました。まずメロディに対してバックでゴスペルのクワイアが歌っているようなメロディを当て、ベースもそれに対して自然な音の動きになるように進行させていきます。そして間のリズムを埋めるように内声もつくっていきます。こつとしてはワンノート(最初の音)が決まると、そこにはどちらかの音へ動きたい欲求が生まれ、その自然な音のほうへ動かしていく事です。これによってコードから離れたハーモニーをつくる事が可能になり、原曲のコード進行と関係ないハーモニーをつける事ができます。
5.曲の中にある重要なコードはかえられない場合もある。
もちろん自由にハーモニーをつけていく事は可能ですが、それだけではもとの楽曲の持つ美しさが消えてしまう事があります。また楽曲中にII7などのダイアトニック外からのコードがある時、そこには作曲者の何かしらの意図があります。その意図を組まずにアレンジして勝手に音をつけてしまうと頓珍漢なアレンジになってしまう事もあります。つねにノートに気を使い、そこにあるノートの本質を壊さないようにアレンジする事を心がけたいです。
6.なんでもかんでもテンションに逃げない。
たとえばCトライアドというコードがそこにあった時、音楽理論をかじった事のある人やジャズをやっている人などはメジャー7に変更して弾きがちです。しかしそうやって響きを複雑にしてしまう事によって大切なものが失われる事もあります。基本的にテンションを付加すればするほどコードの響きは曖昧になっていきます。つまりストレートに何かを伝えたいときや、完結させたいときにはトライアドは真っ先に優先されるべきコードです。
アレンジするという事は原曲を難解にするという事ではなく、新しい価値をその曲に与えるという事です。そこに意味があればどんなテンションでもつかっていいですが、使うノートに意味がなければそのアレンジメントには価値はないのかもしれません。
意味がなければスウィングはない、という曲があります。原題はIt Don't Mean a Thing (If It Ain't Got That Swing)。いい言葉ですね!
また制作途中で気づいた事などもメモライズしていきたいです。
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