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リズム音痴を克服しよう!歌の中に入る情報量とマイケルジャクソンに学ぶグルーヴの取り方

多くの人をレッスンでケアするようになり、様々な悩みを抱えるミュージシャンや初心者、中級者の方を見てきた。そしてその中で一際直すのが難しく、そしてそれ故大きくプロとアマチュアを分ける差、それはやはりリズムの良さだと思う。しかし逆に言えばリズムさえ良ければ誰でもプロミュージシャンになれる、という事だ。

まず第一の疑問は人はなぜリズムが悪いのか?あるいはどこでリズムが崩れてしまうのか?これまでのレッスンの中で、どうしてもカウントが取れない生徒さんに体の動きの中でリズムを作る方法を教えてきた。例えばストロークではオルタネイトストローク。上下の運動の中でリズムを作る方法で、それはそれなりに効果を発揮してきた。しかし休符やブレイクがくると手の動きが止まってしまったりして、とたんに音楽が止まってしまう。つまりリズムを壊す原因は休符にあったのだ。

そこで僕はその穴埋めをするため右手の運動(オルタネイトストローク)で休符をカウントしてもらうことにした。これはある程度効果を発揮して大抵の生徒さんは弾けるようになる。しかしそれでも一定数の生徒さんは弾けないままだ。それを払拭するためにパーカッションを叩いてもらったり、ベースと合わせたり、歌ってみたりしたがなかなか上手くならなかった。恐らく時間と経験が解決するだろうと思い、そのまま沢山の課題を続けたが少しづつの改善は見られたが目を見張るような大きな変化はなかった。

しかしある時、The PoliceのEvery Breath You Takeのリフのレッスンをするとそんなリズム音痴の人たちでも全ての方がリズム良く弾けることがわかった。右手の動きに依存しない弾き方でもみなさん上手に弾けるのだ。何故か。それはこの曲は8ビートでリフ自体も8部音符を弾きっぱなしのラインになっている。つまりビートに乗るタイミングで全て音を出さなければならないのだ。言い換えればビートを刻むタイミング全てに音のデータがあれば人はリズム良く弾くことができる。そして休符がリズムを崩す理由はそこに音のデータが無いからなのだ。

リズムの悪い人は休符をカウントしていない。そのせいでその長さが伸び縮みしてしまい、そこでリズムが崩れてしまう。かくいう僕も最近マシングルーヴの上で弾くことを試しているが、マシンはこちらに合わせてくれないので少しづつずれて来てしまう。つまり僕も休符がきっちりカウント出来ていなかったのだ。

それではどうやって休符をカウントすればいいのだろうか。それは簡単でその休符も歌ってしまえばいいのだ。
例えばこういうラインがあるとする。
「タータターーータ」
「タ」、そして「ー」(伸ばし棒)が1拍分の量で全部で8ビートの1小節になっている。このラインをぜひ口に出して見て欲しい。歌えるようになったら繰り返し練習して欲しい。
リズムの悪い人はこの伸ばし棒部分が曖昧な長さになってしまい、「タータターータ」になったり「タータターーーータ」などリズムが伸び縮みしてしまうのだ。

では次のラインを歌って見て欲しい。
「タツタタツツツタ」
「タ」と「ツ」で1拍分だ。
全ての拍にデータがあるとリズムが作りやすく、歌いやすい。このラインは誰でも歌えると思う。

何かを演奏する際は実際に出ている音は「タータターーータ」のラインでも、頭の中では「タツタタツツツタ」と歌っている。練習の際は実際に後者のラインを声に出してながら前者を弾いてみると良い。すると抜群にリズム感が良くなることがわかる。

つまりリズムの良い人は出ている音よりももっと多い情報量が頭の中では流れているのだ。8ビートなら最小単位の8、16ビートなら16個の音が常に流れている。そしてリズムの悪い人の情報量は少ない。頭の中では歯抜けの音がぎこちなく並んでいる。そのせいでリズムが伸び縮みする。最悪の場合は実際に弾いている音よりも頭の中の情報量が少ないことがある。それを確かめるために、一度知っている曲を弾いて、その後そのラインを歌ってみると良い。その歌った方のラインの方が弾いている実際の音よりも音符の量が多いと、それは情報量が多いという事だ。その情報量を最大にすることによって鉄壁のリズムが手に入るだろう。

情報量の多い歌、という点ではマイケルジャクソンが一番の参考になる。Billie JeanやMan in The Mirrorなどでは歌の歌詞以外にたくさんの音が入っていることがわかる。これはベースなどではゴーストノートと呼ばれる、リズムを実際に声に(音に)出すことによってグルーヴを良くする方法だ。しかし大事なのはゴーストノートだけでなく、実際に頭の中で鳴っている音だ。恐らくマイケルの頭の中ではフルバンドが頭の中で演奏して、ハイハットが細かく鳴らされ続けているのだろう。




実際に出している音以上のデータや、休符の音を頭の中で鳴らす事によってリズムがよくなることが分かった。これは簡単な方法で尚且つ効果的だ。しかしこれはリズムだけに限った話ではなく、音色もそうだ。頭の中で出したい音のイメージが詳細であればあるほど出てくる音は美しい音になる。楽器で演奏するということは2次的なもので、結局は頭の中でどう歌っているかが表層的に出てくるに過ぎない。同じ楽器を使っても上手い人は上手く、下手な人が下手に演奏する理由は楽器のせいではなくそれを使う人にあるということだ。

頭の中の情報量を多くすることが、出てくる音の良さ、グルーヴの良さの違いになる。研究すれば研究するほど自分の音楽が良くなり、自分に見える音楽的スペースも加速度的に広がっていく。昔、手が届かないと思っていた人に手が届くようになり、手が届かないと思っていた人がさらに手が届かないようになる感覚。やっぱり音楽は面白い!

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