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The BeatlesのPenny Laneをアナライズしてみよう!「モーダルインターチェンジとドミナントモーションの裏切り」

The BeatlesのPenny Laneをアナライズしてみました! モーダルインターチェンジの使い方やちょっとしたコード進行の裏切りなどで大きな変化を出す部分は さすがビートルズだな、と唸らされる楽曲になっています。作曲などの参考にされたい方はご覧ください!

まずはPenny Laneのコード進行をRoman Numeralsでアナライズします。
Penny Lane

| IMaj Vim7 | IIm7 V7sus |
| IMaj Vim7 | Im7 | Im7♭5(on Vi)|
| Im7♭5(on ♭Vi) | V7sus V7 | V7sus V7 |
| IMaj Vim7 | IIm7 V7sus |
| IMaj Vim7 | Im7 | Im7♭5(on Vi)|
| Im7♭5(on ♭Vi) | V7sus V7 | IVMaj |
| ♭VllMaj | ♭Vll(on II) | ♭IIIMaj | ♭IIIMaj |
| ♭VllMaj | ♭Vll(on II) | ♭IIIMaj | VMaj |
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ぱっと見ただけで色々ダイアトニック外からのコードが使われています。 例えば上記の動画の0:09の部分、歌では「He's had Pleasure to know」の「to」の部分のメロディは7度の音がフラットして曲調が揺れていきます。 ここで曲のセンターとなるモード、音列が変化しています。この事をモーダルインターチェンジ、と言います。 それに合わせてコードがIMajではなくIm7に変わっていきます。このコードは曲のセンターがメジャー、すなわちIonian modeからマイナー、Aeorian modeに切り替わった事を表します。(理論的にはドリアン、フリジアンでも可。この曲ではエオリアンにモーダルインターチェンジしている。) ビートルズで大事なのはメロディが先にモードチェンジをして、その後モーダルインターチェンジしたコードがついて行く事です。動画0:09の部分も、その他の部分もコードがメロディを引っ張るのではなく、つねにメロディが先に変化しています。メロディがコードを規定していく。これがビートルズにおけるモーダルインターチェンジの理解だと思います。

ビートルズはサブドミナントマイナーのコード(キーのモードがAeorianから派生するコード)を多様します。それがビートルズ特有のふわふわした浮遊間、新しい響きの楽曲を生み出しています。ジョンレノンはその音を異国の鳥のようなサウンドだと評したそうです。

例えば0:36からのサビの部分。 | ♭VllMaj | ♭Vll(on II) | ♭IIIMaj | ♭IIIMaj | このコード進行はすべてAeorin modeの中から派生するコードです。 しかしこのサビではどちらかというと♭IIIMajで安定しているように聞こえるので、 ♭3度上に転調したと考える方が自然でしょう。 ですので進行的には | VMaj | VMaj(on Vii) | IMaj | IMaj | と言い換えた方が良いかもしれません。 このサビからAメロに戻る際に無理矢理ドミナントモーションを起こさせてV7susを最後に持ってこさせる辺りは荒技のように見えますが、 その手前のコードのメロディライン「skies I sit and」(動画の0:48辺り)を♭7、Root、2、♭3と動かしてしっかりコードを♭IIIMaj に聞かせる、つまり転調のように聞かすのではなくモーダルインターチェンジ的にAeorianモードのラインを聞かせているのがさすがです。これは推測ですが転調とモーダルインターチェンジを別個のテクニックとして捉えるのではなく、同じ種類の技法として捉えてたのかもしれません。うーん、面白いな、ビートルズ!

しかしながらこの楽曲では歌詞の流れとは関係なくモードを切り替えている割に、サビ前の「very strange」(0:35の辺り)ではV7からドミナントモーションせずにサブドミナントのIVMajに変えて歌詞のStrange感を出しています。こんな単純な裏切りでしっかり歌詞の内容を響かせるあたりもさすがですが、ビートルズにとってモードの変更は特に歌詞の内容に沿う必要も無く、各モードは並列的に存在していた。それを自由に変更する事は彼らに取って自然だった。そしてドミナントモーション(バッハなどのクラシカルなコード進行)を裏切る方がより「Strange」だった、と考えるとポールやジョンの音楽の捉え方が見えてきて中々面白いです。ちなみにサビ前のV7は次の音のドミナントでもあるんですね。なんて考えられた音楽なんだ。すごいなー。いや、本当に。

今回僕に取って重要だな、と思った事は2つあります。 ひとつはメロディーがコードを規定する。先にメロディのモードが変わるとナチュラルにモーダルインターチェンジが出来る事。 そしてドミナントからトニックに行かずにサブドミナントに行くという単純な裏切りが、使い方によっては抜群の効果を生む、という事です。 特に歌詞がある楽曲の場合は歌詞の内容に合わせてコードを変えて行く事が出来たら素敵ですよね。 これらを踏まえてまた作品作り、作曲の勉強をしていきたいですね!

 
今回のアナライズを踏まえて、沖縄の風景に合わせて音楽を作ってみました。是非ご覧ください!

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